地獄の夏合宿 その2

初日の朝。朝練と云うのがあって、確か6時半ぐらいが集合時間だったと記憶している。いや、もう少し遅かったかも知れない。いずれにしても6時半集合だと4年生が6時半集合であって、3年はその5分前、2年は10分前、1年生は15分以上前に集合と云うことになる。だが、朝起きられないということは無かった。しっかり睡眠を取ることが出来たからだろう。

集合完了すると、統制(役職)の先輩が先頭になり、40名程の集団はジョギングより少しばかり速いペースで走る。1年生にとっては、いや、学年に関わらず、他の4年生でさえもどのくらい走るのかは分からないのだ。つまり統制の先輩の考えひとつで長くなったり短くなったり。このことが後から反吐を吐くぐらいのトレーニングに繋がるわけである。

朝練の名物は声出しである。自己紹介と自慢の曲を1曲歌うのだ。紹介は出身高校と所属学部そして氏名、曲は決して上手く歌ってはいけないのである。

〇〇県立××高等学校出身!△△学部▽▽学科1年!法政太郎で~す!ってな具合だ。

この声出しには2年生も参加していたのだが、1年生全員が出す声が2年生3人の出す声に確実に負けているなと感じ、1年の長は凄いものなのだと感じたのだが、当時は大きな声を出すこと、出せることが良しとされていたからでもある。

歌う曲に注文が入ることがたまにあったが、今思うと、正直先輩らは俺たちの歌を聴きながらフツフツと笑っていたので、彼らにとっては息抜きでもあったのかと思えるのである。

自分はこういうアナクロニズム的な行為は嫌いではなかったので、特に反発は無かったが、別段一所懸命さを前面に出して声出しや1曲披露せずとも特に問題無いと考えてはいたが、その場をしのくためにはそれなりの立ち振る舞いが必要と判断し、傍目には一所懸命やっていたと写っただろう。こういうものは通過儀礼なので、あまり深刻に考えても身体に悪いだけ。そういうある種醒めた考えを当時の自分は持っていたようだ。

午前中のウエイトトレーニング。トレーニング場が宿からずいぶん遠くにあったため、昼飯後の休み時間がそれほど長く取れず、少し横になっただけで、準備に向かわなければならなかった。1年生全員で固まっていくわけでもなく、それぞれが思い思いの判断で宿を出て体育館に向かった。

事件はまだまだ先のこと・・・。