狂気の学園祭 その5(これで終わり)

最終日の狂気の宴会でほぼ記憶を失くした自分は、警備本部の床の上で目を覚ました。古武道の同級生とバケツを奪い合って吐いていたことだけは何故か鮮明に覚えているのはどういうことだろう。二人で顔つき合わしてひとつのバケツにゲロを吐く様を想像して欲しい。一生の中でなかなかできる経験ではないなと思うだろう。

二日酔いだからと後片付けをさぼるわけにはいかず、上級生や実行委員会の先輩方の指示に従い、 キャンパスのあちこちに散らばった、通常は廊下に並んでいる椅子を回収し元の位置に配置するのだが、この椅子が重い重い。二日酔いと疲労困憊の身体に鞭打ってようやく昼過ぎに人力でできる仕事が終わり解散となった。

キャンパスは暴動が起きた後のようになっており、ピロティ下はなぜか泥でいっぱいで、キャンパスには材木や釘などが散乱していた。重機が数台入り、ガアアアっと音を立てながら作業する様はとても大学の構内とは思えなかった。

作業中、クラスメイトと合ったらしいが、あまりの疲労に記憶が無く、授業でそいつと会った時に「学園祭警備、過酷だったんだな」と労ってくれたのは嬉しかった。クラスメイトのほとんどは学園祭休みと称して帰省したり、レジャーに出かけたりする奴が多く、学園祭で風呂も入れず警備して、それでもバンカラ気取ってるような学生は少数派なのだと感じた。

他団体の同級生と疲れた身体を引き摺りながら飯田橋駅に向かう。娑婆に出る(当時、学園祭実施中の学校外をこう呼んでいた)と、自分らが如何に臭いかを自覚する。この臭さで電車か・・・と思いながらも、周りの目を気にしながらアパートに到着。風呂は無いので、銭湯が開店する時間までお湯を沸かして身体を拭いて凌いだ。あのまま銭湯に行っていたら、客に迷惑だっただろうに。

そんなこんなで、大学1年時の秋は過ぎて行った。